みなさん、「ダウ理論」の「6つの基本法則」はご存知でしょうか?
「ダウ理論」(Dow Theory)は、1800年代後半に、アメリカの証券アナリスト、チャールズ・H・
ダウ氏 ※Charles H. Dow 今も使われている、「NYダウ平均株価」の考案者でもあります。
により考案された、テクニカル分析の理論です。
今回は、「ダウ理論」の「6つの基本法則」の紹介と、株式長期投資に対してこれら6つの基本法則
を、どのように活用すればいいのか、考察していきたいと思います。
「ダウ理論」の「6つの基本法則」
「ダウ理論」の「6つの基本法則」は、日本語訳では、以下のように紹介されています。
- 価格はすべての事象を織り込む
- トレンドには3種類ある
- 主要トレンドは3段階からなる
- 平均は相互に確認されなければならない
- トレンドは出来高でも確認されなければならない
- トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
これらを、ひとつひとつ考察していきます。
価格はすべての事象を織り込む
The market discounts everything.
日本語訳で、「平均はすべての事象を織り込む」と訳されている場合もありますが、英文では、
「The market」とありますので、「価格」のほうが適切だと思います。
意味としては、価格、今回は株式投資なので株価になりますが、株価は、すべての事象、例えば、
- 投資対象企業のここまでの業績
- 投資対象企業の今後の成長見込み
はもちろんのこと、
- 今後の市況見通し
- 災害発生リスク
- テロ、戦争、紛争発生リスク
- 為替変動リスク
- 金利変動リスク
などなど、投資対象企業の「事象」だけではなく、外部環境の「事象」についても、すべて株価に
織り込まれるという意味になります。
(参考)ファナック(6954)有価証券報告書ー第51期
※この資料の10ページに、「富士山噴火リスク」について記述があります。
この理論を理解した上で、長期株式投資に対する戦略をどのようにすればいいかということですが、
わたしが考察した方針は以下の通りです。
- 株式長期投資には、株価上昇を期待する投資であるため、成長が見込まれる企業を選定すること
は絶対条件。 - 成長が見込まれる企業である故に、すべての事象を織り込んだ株価となっているため、株価、特に
株価収益率(PER)は、すでに高い場合が多いことを理解しておく。 - 以上の条件から、少しでも割安で株を買うためには、
- 外部要因(市況の暴落など)で、株価、PERが下がった時に買う
- 投資対象企業の一時的な業績不振(今回のコロナ禍など)によって、株価が下落した時に買う
- また、多少PERが高くても、それ以上の成長が見込まれるのであれば、少し割高でも買うという
ことも選択肢に入れておく
という戦略が考えられます。
トレンドには3種類ある
There are three primary kinds of market trends.
ここでいうトレンドの3種類とは、「期間」を示すもので、下記の期間で発生するトレンドが、3種類
あると、ダウ氏は説いています。
- 主要トレンド:1年~数年周期で発生するトレンド
- 二次トレンド:3週間~3か月周期で発生するトレンド
主要トレンドの中での、強気相場の押し目下げ、弱気相場の押し目上げによるもの - 小トレンド :3週未満で発生するトレンド
これは、主にノイズであると、ダウ氏は説いています
これを、日経平均株価で確認してみます。
長期投資を行う上では、「主要トレンド」が最も重要という事になります。
執筆時の2021年2月26日は、日経平均株価ー1202.26円と、大幅な下げに見舞われています。
しかし、主要トレンドは、アップトレンドに見えますので、もしかしたらこの下げは、長期投資買い
の「チャンス」かもしれませんし、二次トレンドを見ると、下げトレンドへの転換にも見えますので、
もう少し下値を確認するまで、待つのがいいのかもしれません。
具体的な投資判断は、今日2021年2月26日の状況では迷うところですが、このように、ダウ理論を
活用すればいいということはわかっていただけたかと思います。
主要トレンドは3段階からなる
Primary trends have three phases.
主要トレンドは3段階からなるという理論で、上昇トレンドを例にとって、図で示すと、以下の3段階
からなりです。
- 第1フェーズ:ここまでの下降トレンドからの転換を観測されたときに発生する上昇トレンドの
始まりのフェーズ。
長期投資を考えた場合、ここで買いで参入するのがベストではありますが、それまでの下降トレ
ンドの終焉を見極める必要があるので、一般人にはとても難しいところでもあります。 - 第2フェーズ:第1フェーズで形成された上昇トレンドへの転換を確認し、そこから一般投資家など
も含めて大きなトレンドが形成されるフェーズ。
長期投資を考えた場合、一番トレンドフォローしやすいフェーズ。
このフェーズでは、ぜひ参加したいところです。 - 第3フェーズ:一般投資家、短期の投資家も参加し、過熱状態となっているフェーズ。
このフェーズに入ると、第1フェーズで参加していた投資家は、ポジション整理を始めます。
長期投資を考えた場合、このフェーズで参加するのは避けたほうがいいフェーズとなります。
平均は相互に確認されなければならない
Indices must confirm each other.
ダウ氏は、トレンド発生を確認する際、下記の2つの指標を用いました。
1800年代後半のアメリカでは、物資輸送の中心は鉄道でした。
ダウ氏は、市況が好景気で、ダウ平均株価に上昇トレンド発生が観測されても、もし鉄道が不況で、
ダウ輸送株平均に上昇トレンドがみられなければ、ダウ平均株価でみられた上昇トレンドは長くは
続かない可能性があると考察しました。
21世紀の現代において、鉄道が物資輸送の中心ではないと思いますので、この点については、別の
指標を用いる必要があると思います。
日本の株式で、もう少し細かく考えてみると、
- 旅行業界×航空業界
- 飲食業界×人材派遣業界
- 飲食業界×水産業界
- 建設業界×ガラス・土石製品業界
- 市況平均×証券・商品先物業界
などなど、異業種の好不況がそれぞれどのような状況か確認し、投資判断を決定するというのも
戦略のひとつと思います。
トレンドは出来高でも確認されなければならない
Volume must confirm the trend.
ダウ氏によると、出来高とトレンドは以下の関係を確認されなければならないと説いています。
- 上昇トレンドでは、値上がり時には出来高は増加し、値下がり時には出来高は減少する。
- 下降トレンドでは、値上がり時には出来高は減少し、値下がり時には出来高は増加する。
すなわち、主要トレンドの方向に向かう時に出来高は増加するとの考えであり、二次トレンド、
小トレンド発生により、主要トレンドと逆行する場合は、出来高は大きくならないという考えを
説いたものです。
これを活用する場合、前述した主要トレンド3段階のうち、第1フェーズ終了→第2フェーズの始まり
を確認する際、出来高多→出来高減少→出来高増加に転じたところで買い発動とすれば、第2フェーズ
の始まりをいいタイミングでとらえることが出来るかもしれません。
トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する
Trends persist until a clear reversal occurs.
主要トレンドの転換と、二次トレンドの押し目とは、どうしても混同しがちです。
ただ、この判断を間違えると、トレンドに対し逆に張ることになり、トレンドフォローとはなり
ません。
よって、ダウ氏は、「トレンドは明確な転換シグナルが発生するまで継続する」と説き、裏を返す
と、「トレンドは明確な転換シグナルが発生しないと転換しない」と、警鐘を鳴らしています。
明確な転換シグナルの例として、
- 主要トレンド上昇中に含まれる、二次トレンドの直近の安値を割り込む
- トレンドフォロー系シグナル(長期移動平均線、一目均衡表、ADXなど)で、明確な転換シグナル
を確認する。
などを活用することが考えられます。
まとめ
今回は、「ダウ理論」の「6つの基本法則」を、長期投資にどのように活用すればいいか、考察して
みました。
ダウ理論が提唱されてから100年以上経過しますが、今も語り継がれる理論ということで、考えて
みると、これはすごいことだと思います。
また、多くの人がこの理論を認識することによって、同じような投資行動を行うことで、これらの
多数派により価格の方向性が決まり、それによって理論通りの動きになるという面もあると思います。
そう考えると、この「ダウ理論」の「6つの基本法則」は、長期投資を行う上でも、理解しておきたい
理論のひとつということになります。
ダウ理論が提唱された時代から、市場環境は大きく変わっていますので、変わっているところは再考
する必要はあります。
しかし、今も昔も、株価の動きは人間心理で形成されるものですので、理論に沿ったトレンドフォロー
戦略を考えることで、投資成績は向上すると思われます。
みなさんの投資判断の一助となれば幸いです。
※個人的な私見を含みます。
※投資に関する判断は自己責任にてお願いします。
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